アフリカのアルベルト・シュヴァイツァー博士のもとで奉仕したいと願った日本女性がいた。
東京女子大学を卒業し、彼女は博士に手紙を書いた。そうしたら、英語ではなく仏語の勉強をするように、という言葉と、サイン入りの写真が送られて来た。
彼女は日本にとどまり、結婚して寺の坊主(ぼうしゅ)さんになった。晩年は「故郷の家・京都」に入所し、毎月70万円払う有料老人ホームよりここがいいと満足してくださった。そして、私にシュヴァイツァー博士のサイン入りの写真をくださった。私の宝物になった。
シュヴァイツァー博士には感動を与える色々な話があるが、1952年、ノーベル賞授賞式に出席する時のことだ。アフリカを出てスウェーデンに行く折にパリを経由した際、新聞記者たちが取材をしようと博士を探した。貴族ゆえ一等席と特等室を探したが、博士は見つからない。三等席に座ってそこにいる人たちの診察をしていた。驚いた記者が「博士はどうして三等席に乗ったのですか?」と聞くと、シュヴァイツァー博士は「一等席や特等室の人々は私を必要としていません」と答えたという。
謙虚さは頭を下げるのではありません。心を低くするのです。
相手を尊重し、相手の立場を理解しながら認めるのです。
かつて博士のもとで奉仕をしたいと思った女性も、私に共に生きる素晴らしさを悟らせてくれました。共に生きることは、相手の考えも宗教も尊重する事だと。寺の坊主さんでありながら、クリスマスの時には私にプレゼントを送ってくれたのです。
社会福祉法人こころの家族 尹基(Tauchi Motoi) 2024年1月1日