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本は万人のものである

ソーシャルワーカー 尹基
社会福祉法人 こころの家族理事長

 

 「本は万人のもの(Book for All)」
これはユネスコが1972年を世界書籍の年と定めて作ったキャッチフレーズです。

 10月は、本を読むには良い季節である。秋を迎え、一日一日変わる窓の外の風景を眺めていると、子供の頃の記憶が突然浮び上がったりする。

 木浦の儒達山と多島海を眺めながら、友たちと遊んでいたその時が懐かしい。
土ぼこりをぐらぐら飛ばす、熱い日焼けの山道を越えて木浦市内に入ると、馬車でもなく牛車でもなく、人力車に本を載せていく姿を見て不思議に思い走って行って見た。
本に触れて、本を人力車に載せ販売していたおじさんに声をかけてみた。
その時、初めて読んだ本が「土」であった。
1931年ごろ、韓国の農村のかつてないひどい状況を描いたイ・グァンス(李光洙)の「土」は、私に農村を夢見るようにした。当時人力車を引いて本を売っていたその方は、今日の韓国の有名な出版社を創設した。

 東京駅内、丸の内の店の中にはブックカフェがある。
本を見てリラックスすることができる場所だ。
私は京都のユン・ウンス(尹応寿)氏が寄贈した本を故郷の家・東京の地域交流室兼図書室に飾った。

 本と言えば浮び上がる方がおられる。
韓国において安重根の研究と独島問題研究の第一人者と呼ばれる崔書勉先生である。
90歳という年にもかかわらず、東京に来られたら車椅子に乗って図書館と神保町に抜ける。
先生にとって本は恋人であり、図書館は家である。
故郷の家・東京が単なる老人ホームを越えて、韓日間の知的交流の場になることを願った方でもある。

 福祉は文化である。
高齢者が地域社会と繋がる。
絵本もあったらこどもたちも喜ぶだろう。
本と一緒にいると幸せになる。

2017年11月1日 

尹 基(ユン・キ)
 韓国・木浦で孤児達の施設「共生園」を創始した伝道師・尹致浩を父に、その妻であり尹致浩のあとを継いで共生園を守り続けた田内千鶴子を母として生まれた。社会福祉法人こころの家族理事長。母の生涯を著した「愛の黙示録/母よ、そして我が子らよ」は映画化され、多くの人の感動を得た。「梅干しとキムチ」に象徴されるはじめての日韓共生の老人施設「故郷の家」は現在4施設となり、日本の福祉に新しい風を送り続けている。

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