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夢を持てる日本に |
社会福祉法人 こころの家族
理事長 尹 基 |
ショッキングな新聞記事を目にした。政府の経済連携協定にもとづき来日したインドネシア、フィリピンからの看護師候補者の国家試験合格率が、わずか1・2%。数では、たった3人だった、というニュースだ。
「故郷の家」は、20年近く前から韓国の研修生を受け入れている。その経験を買われ、以前に通産省の官僚から、アジアからの人材受け入れについて意見を聞かれた。
私は、即座に答えた。「いずれ国際問題になりますよ」と。
日本語の壁は高く、国家試験の合格率が低いことは容易に想像できる。しかし、この協定では、日本に来る候補生は、試験の合格以外に道はない。落第したら帰国するしかない。
仕方ないではないか、と言う人もいるかも知れない。だが、考えて欲しい。アジアからの人たちは日本の豊かさにひかれて来る。
来日の手段が看護・介護だったとしても、日本に来てみれば魅力ある仕事はたくさんある。国家試験に合格できずとも、一定期間が過ぎれば、豊かさを得る他の仕事を選べるようにしてもいいのではないか。
かつて、韓国も同じだった。音楽の勉強がしたくてもかなわぬため、准看護婦の資格を取って、西ドイツに行き、働きながら好きな音楽の勉強をし、後に大学教授になった韓国人女性のことを思い出した。
彼女は夢を手に入れた。西ドイツが、それを手助けしてくれた。
だが、今の日本の制度ならダメ。アジアの人たちは、失望を持ち帰るしかない。
韓国・法務省の出入国管理事務所に行った時、大きな垂れ幕に「外国人とともに発展する大韓民国」と書かれていた。
2010年8月1日
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